法人税の課税所得の範囲

法人税の課税所得

法人税の納税義務のある法人であっても、法人の種類により課税所得の範囲は同じでなく、また適用される税率も異なります。なお、連結納税を適用している法人については内国法人(普通法人、協同組合等)と同じになります。

【内国法人】

①普通法人、協同組合等
各事業年度の所得に対する法人税が課せられます。

②公益法人等、人格のない社団等
各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得についてのみ各事業年度の所得に対する法人税が課せられます。

③退職年金業務等
信託会社や生命保険会社など退職年金業務等を行う法人は①又は②の法人税のほか、各事業年度の退職年金等積立金に対する法人税が課せられます。
(平成11年4月1日~令和5年3月31日までの間に開始する事業年度については時限措置として課税が停止されています。)

【外国法人】

①普通法人
各事業年度の所得のうち国内源泉所得について各事業年度の所得に対する法人税が課せられます。

②人格のない社団等
各事業年度の所得のうち国内源泉所得について収益事業から生じた所得についてのみ各事業年度の所得に対する法人税が課せられます。

③退職年金業務等
内国法人と同じ。

各事業年度の所得 連結所得 法人課税信託の所得※2 退職年金等積立金※3 特定同族会社等の留保金
公共法人 課税なし
公益法人等 収益事業から生じた所得に対してのみ課税 課税なし 課税 課税 課税なし
協同組合等 課税 ※1 課税 課税 課税なし
人格のない社団等 収益事業から生じた所得に対してのみ課税 課税なし 課税 課税 課税なし
普通法人 課税 課税 課税 課税 課税

※1連結子法人となれるのは普通法人だけですので、協同組合等が親法人に該当する場合のみ、親法人の所得に対して課税されます。

※2法人課税信託の所得に対する法人税
信託とは、特定の者(受託者)が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法2条)。法人課税信託については法人税法4条の七 3項に「受託法人(会社でないものに限る。)は、会社とみなす。」と規定され、受託法人のうち会社でないものは、会社とみなすこととされています。税務上は一般的に信託の収益の発生時に受益者に課税されますが、信託期間が長期にわたる場合、受託者に収益を保留されること等により課税の繰り延べや租税回避に利用される恐れがあります。そこで、そういった危険のある特定の信託(法人課税信託)については、受託者に信託所得に対し課税することとしています。

※3退職年金等積立金に対する法人税
事業主が信託銀行等と締結している適格退職年金契約に係る掛金等の損金算入時期及び従業員が受け取る退職年金等に対する課税のタイミングにはズレがあり、ズレに対する利息的性格のものとして法人税が課されるものです。
すなわち事業主が支出した掛金等の額は、事業主の法人税の課税所得の計算上、損金の額に算入されますが、従業員については、事業主が掛金等を支出した時点では給与にならず課税されません。課税されるのは退職年金等として受け取ったときになります。このズレが遅延利息の性格を有するものとして課税されます。

なお、退職年金掛金の一部を従業員が負担した場合は、その掛金は生命保険料控除の対象となり、従業員が退職により受け取る退職年金等については、退職年金として受け取った場合は公的年金等に該当し、雑所得になり、退職一時金として受け取った場合はみなし退職手当等に該当し、退職所得として課税されます。
信託銀行等に積み立てられている退職年金等積立金に対しては、原則、毎年1%の法人税が課税されます。

公益法人等、人格のない社団等における収益事業とは

公益法人等、人格のない社団等が法人税法施行令第5条第1項に掲げる下記の34種類のいずれかに該当する事業を行う場合は、その行う事業が公益法人等、人格のない社団等の本来の目的の事業であっても、当該事業から生じる所得については原則として法人税が課せられます。

No. 業種 No. 業種
物品販売業 18 代理業
不動産販売業 19 仲立業
金銭貸付業 20 問屋業
物品貸付業 21 鉱業
不動産貸付業 22 土石採取業
製造業 23 浴場業
通信業 24 理容業
運送業 25 美容業
倉庫業 26 興行業
10 請負業 27 遊技所業
11 印刷業 28 遊覧所業
12 出版業 29 医療保険業
13 写真業 30 技芸教授業
14 席貸業 31 駐車場業
15 旅館業 32 信用保証業
16 料理店業その他の飲食店業 33 無体財産権提供業
17 周旋業 34 労働者派遣業

これらの事業(「その性質上その事業に付随して行われる行為を含む」)を「継続して」「事業場を設けて」行った場合は課税対象になります。

「継続して」とは
各事業年度の全期間を通して継続して事業活動を行うもののほか、下記のような場合も含まれます。(法人税法基本通達15-1-5)
・1つの事業計画に基づいて行われる事業が、通常相当期間かかるもの
(例) 土地の造成や分譲、全集や事典も出版など

・通常相当期間にわたって継続して行われるものや、定期的もしくは不定期に反復して行われるもの
(例) 海水浴場での席貸し、縁日での販売など

「事業場を設けて」とは
常に店舗、事務所等事業活動の拠点となる一定の場所を設けてその事業を行う場合のほか、下記のような場合もふくまれます。(法人税法基本通達15-1-4)
・必要に応じて随時その事業活動のための場所を設ける場合
・既存の施設を利用してその事業活動を行うな場合
・移動販売、移動演劇興行等のようにその事業活動を行う場所が転々と移動するものである場合

また、その性質上その事業に附随して行われる行為とは下記のように通常その収益事業に係る事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる行為をいうとされています。(法人税法基本通達15-1-6)

・出版業を行う公益法人等が行うその出版に係る業務に関係する講演会の開催又は当該業務に係る出版物に掲載する広告の引受け
・技芸教授業を行う公益法人等が行うその技芸の教授に係る教科書その他これに類する教材の販売及びバザーの開催
・旅館業又は料理店業を行う公益法人等がその旅館等において行う会議等のための席貸し
・興行業を行う公益法人等が放送会社に対しその興行に係る催し物の放送をすることを許諾する行為
・公益法人等が収益事業から生じた所得を預金、有価証券等に運用する行為
・公益法人等が収益事業に属する固定資産等を処分する行為

但し、

①公益社団法人、公益財団法人が行う公益目的事業、
②公益法人等が行う収益事業で事業に従事する身体障害者及び生活保護者等が事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているもの

に関しては34種類の事業に対しても課税されません。

広告


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする