法人税法の事業年度、解散・合併・清算みなし事業年度、1年超の事業年度

法人の事業年度、みなし事業年度

法人税法において事業年度とは、原則として法人の財産及び損益の計算の単位となる期間で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるものに定めるものをいいます(法人税法13条)。

事業年度(会計期間)の定めが無い場合や定めた期間が1年を超える場合は別途取り決めがあります。

法人の事業年度(原則)

1.法令や定款等に事業年度(会計期間)を定めている場合(内国法人、外国法人とも同じ)

①事業年度(会計期間)が1年を超えないとき
法令や定款等に定めた期間になります。

②事業年度(会計期間)が1年を超えるとき
会計期間の開始の日以後1年毎に区分した各期間が事業年度になります。最後に1年未満の期間が生じたときは、その1年未満の期間が事業年度になります。

2.法令や定款等に事業年度(会計期間)を定めていない場合(内国法人の場合)

①設立の日から2ヶ月以内に事業年度(会計期間)を定めて所轄税務署長に届出る必要があり、届け出た期間が事業年度になります(会計期間が1年を超えないときは、その期間。1年を超えるときは4.1年を超える会計期間の場合(内国法人、外国法人とも同じ)参照)。

②①の届け出すべき法人(人格のない社団等を除く)が届け出をしない場合は、納税地の所轄税務署長が会計期間を指定し、書面により通知された期間が事業年度になります。

③①の届け出をすべき人格のない社団等が届け出をしない場合は、1月1日から12月31日までが事業年度になります。

3.法令や定款等に事業年度(会計期間)を定めていない場合(外国法人の場合)

(1)恒久的施設がある場合
①恒久的施設を持つ外国法人になった日(人格のない社団等については収益事業から生じる国内源泉所得が発生することになった日)から2ヶ月以内に事業年度(会計期間)を定めて所轄税務署長に届出る必要があり、届け出た期間が事業年度になります。

なお、事業年度(会計期間)が1年を超えないときは、その期間になります(1年を超えるときは4.1年を超える会計期間の場合(内国法人、外国法人とも同じ)参照)。

②①の届け出すべき法人(人格のない社団等を除く)が届け出をしない場合は、納税地の所轄税務署長が会計期間を指定し、書面により通知された期間が事業年度になります。

③①の届け出をすべき人格のない社団等が届け出をしない場合は、1月1日から12月31日までが事業年度になります。

(2)恒久的施設がない場合
①演劇俳優や音楽家、職業運動家その他の芸能人、弁護士、公認会計士など人的役務の提供が主な事業を国内で開始し、または、それ以外の国内源泉所得(資産運用、資産譲渡、不動産等貸付、その他保険金、資産の贈与など源泉が国内にある所得として一定のもの)が発生した日(人格のない社団等については収益事業からの国内源泉所得が発生した日)から2ヶ月以内に会計期間を定めて所轄税務署長に届出る必要があり、届け出た期間が事業年度になります。

なお、事業年度(会計期間)が1年を超えないときは、その期間になります(1年を超えるときは4.1年を超える会計期間の場合(内国法人、外国法人とも同じ)参照)。

②①の届け出すべき法人(人格のない社団等を除く)が届け出をしない場合は、納税地の所轄税務署長が会計期間を指定し、書面により通知された期間が事業年度になります。

③①の届け出をすべき人格のない社団等が届け出をしない場合は、1月1日から12月31日までが事業年度になります。

恒久的施設とは
恒久的施設は、次の3つの種類に区分されています。
(1)支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所。ただし、資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所は含みません。
(2)建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供で、1年を超えて行うもの。
(3)非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等(代理人等が、その事業に関わる業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等を除きます。)。

日本国内に恒久的施設を持つかどうかを判定するに当たっては、形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定します。例えば、事業活動の拠点となっているホテルの一室は、恒久的施設に該当しますが、単なる貯蔵庫は恒久的施設に該当しないことになります。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2882.htm

4.1年を超える会計期間の場合(内国法人、外国法人とも同じ)

会計期間の開始の日以後1年毎に区分した各期間が事業年度になりますが、最後に1年未満の期間が生じたときは、その1年未満の期間が事業年度になります。

※法人の定めた会計期間と別に法人税だけの事業年度を別途決めることはできず、また、法人が定款等に定める会計期間を変更し、また、新たに定めた場合は、変更後の会計期間を遅滞なく所轄税務署長に届け出る必要があります。

みなし事業年度

法人が事業年度途中において解散したり、合併、清算などにより消滅した場合は下記のように、それぞれの期間を1事業年度とみなすことになります(法人税法14条)。

(1)内国法人(連結子法人除く)が事業年度の中途で解散(合併による解散を除きます)した場合
その事業年度開始の日から解散の日までの期間(解散事業年度)及び解散の日の翌日からその事業年度の終了の日まで(法人税法14条1項)。

(イ)株式会社(内国法人)の場合
会社法494条1項において、清算事業年度は株式会社の解散の日の翌日から各1年の期間とされています。そのため、みなし事業年度は下記のようになります。

※清算事業年度
株式会社の解散の日の翌日から始まる各1年の期間をいい、清算する株式会社は各清算事業年度の貸借対照表、事務報告、附属明細書を作成する必要があります(会社法494条1項)。法人税法における事業年度とは「法人の財産及び損益の計算の単位となる期間」(法人税法13条)であるため、解散後は清算事業年度ごとの法人税の計算が必要になります。

(ロ)株式会社以外の内国法人の場合
会社法に規定する清算事業年度は株式会社に対するものであり(会社法494条)、株式会社以外の内国法人には解散後の事業年度を解散の日の翌日から各1年とする規定はありませんので、解散の日の翌日から定款等で定めた当初の事業年度終了の日までが清算事業年度となります。

※解散の日(法人税法基本通達1-2-4)
・株主総会等で解散の日を定めた場合は定めた日、定めなかった場合は解散の決議の日
・解散事由の発生により解散した場合は、事由発生の日

(2)内国法人が事業年度の中途で合併により解散した場合
   事業年度開始の日から合併の日の前日まで。

(3)内国法人である公益法人等又は人格のない社団等が事業年度の途中で新たに収益事業を開始した場合
収益事業を開始した日から収益事業を開始した日の属する事業年度終了の日まで。

(4)公益法人等が事業年度の途中で普通法人若しくは協同組合等になつた場合又は普通法人若しくは協同組合等が事業年度の途中で公益法人等になつた場合
事業年度開始の日からいずれにか該当することとなった日の前日まで及びいずれかに該当することとなった日から事業年度の終了の日まで。

(5)清算中の法人の残余財産が事業年度の途中で確定した場合
事業年度開始の日から残余財産確定の日まで。
なお、残余財産の確定により法人は消滅しますので、その後に課税関係が生ずることはないため、残余財産確定後の期間についてはみなし事業年度の規定はありません。

*残余財産確定の日は会社法や法人税法等に明確な規定がありません。そのため、財産を全て資金化し(資金化していない場合は確実に資金化できることを前提として金額が確定した日)、債務の弁済が完了した日とするのが通説のようです。

(6)清算中の法人が事業年度の途中で継続した場合
事業年度開始の日から継続の日の前日まで及び継続の日から事業年度終了の日まで。

※会社の継続とは、清算事業年度途中の会社が情勢の変化等により解散前の状態に戻して事業を継続させることをいいます。ここで継続の日とは、株主総会等で継続の日を定めた場合は定めた日、定めなかった場合は継続の決議の日となります。

また、継続によって解散前の状態に戻るため、事業年度はもともとの定款等に定められていた事業年度に戻ります。すなわち、継続の日が清算事業年度の途中だった場合は、継続決議の前日までの期間が1事業年度とみなされ、継続決議の日からもともとの定款等に定められた事業年度末までの期間がさらに1事業年度とみなされます。継続決議の日から清算事業年度終了の日ではありませんので注意が必要です。

なお、連結子法人が解散した場合(一部除く)においては、課される法人税は連結所得に対するものであるため、事業年度が区切られることはなく、連結親法人の事業年度が計算単位となり、みなし事業年度が問題になることはありません。

決算日変更により事業年度が1年を超える会計期間の場合(会計期間・事業年度の変更など含む)の法人税申告・納税

会計期間をどのように定めるかは、法人が自由に決めることが本来ですが、会社については会社法により毎決算期に貸借対照表等の計算書類を作成する必要があり、各会計期間に係る計算書類の作成期間は会社が任意に設定することができますが、1年を超えることはできません(会社計算規則59条2項)。ただし、決算日変更の場合は、変更後の最初の事業年度については1年6ヵ月以内であればよいとされています(よって、設立時の事業年度においては1年を超える事業年度は認められません)。

一方、法人税法では1年を超える事業年度は認められていないため、例えば決算日変更により最初の会計期間が1年5ヵ月となった場合は、最初の1年分と次の5ヵ月分の法人税の申告・納税が必要になります。

国際会計基準の適用により、日本の親会社が決算日を変更する場合等に1年を超える会計期間が生じる場合がありますので注意が必要です。

なお、1年未満の会計期間(会社法)、1年未満の事業年度(法人税法)は、会社法、法人税法とも認めていますので、期間の不一致は生じません。