法人税の確定申告

法人税 確定申告

確定申告は個人だけではなく、法人も事業年度ごとに、決算日から2か月以内に、法人税申告書を作成し、課税所得に対する法人税を納付します。

法人の確定申告は個人とは期限や手順が大きく異なります。

ここでは法人の確定申告とはどういったものか、確定申告書の提出期限・時期について解説します。

確定申告とは

法人税の納税義務は、各事業年度(連結所得に対する法人税については、連結事業年度)の終了時点で確定しますが、納付する法人税の額は、法人税法が定める租税債務の額の確定手続としての納税申告書(確定申告書、中間申告書等)を法人が提出することにより確定します(国税通則法15条、16条)。

確定申告とは、内国法人が事業年度が終了した後に決算を行い、決算に対する株主総会の承認を受け、承認を受けた決算(確定決算)に基づいて課税所得や法人税額、課税所得計算の基礎、その事業年度の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び勘定科目内訳明細書、内国法人の事業等の概況に関する書類等、法人税法に定められた事項を記載した申告書(確定申告書)を納税地の所轄税務署長に提出することをいいます。

なお、欠損のために納付すべき法人税が無い場合でも必ず確定申告書の提出義務があります。

法人の確定申告書の提出期限・時期

確定申告書の提出期限・時期は、原則として各事業年度の終了の日の翌日から2ヶ月以内になります(法人税法74条1項)。

なお、申告書を2ヶ月以内に提出した場合を「期限内申告」といい、期限を過ぎてから提出した場合を「期限後申告」といいます。

ただし、確定申告書が確定決算に基づき作成されることを建前としていますので、下記の理由により、法人の決算が2ヶ月以内に確定しない場合は、下記区分に応じて申告期限の延長を申請できます(法人税法75条、75条の2)。

①国税通則法による場合(中間申告書も対象)(国税通則法11条、国税通則法施行令3条)
国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害等のやむを得ない理由により、申告の期限までに確定申告書の提出ができないと認めるときは、その理由の無くなった日から2ヶ月以内に限り期限を延長することができます。

都道府県の全部または一部にわたる災害、その他やむを得ない理由の場合は、国税庁長官が地域及び期日を指定して期限を延長し、個別的な場合や災害の範囲が狭い場合は、法人の申請により所轄税務署長が申告期限を延長することができます。

②提出期限の延長申請(中間申告書は対象外)(法人税法75条1項、2項、3項、5項)
内国法人は災害その他やむを得ない理由(③の場合を除く)により、決算が確定できず確定申告の提出期限までに確定申告書を提出できない場合は、①の場合を除き納税地の所轄税務署長は、その内国法人の申請により期日を指定して確定申告書の提出期限を延長することができます。

この場合、事業年度終了の日の翌日から45日以内に確定申告書の提出期限までに決算が確定しない理由、確定申告書の提出期日等を記載した申請書を提出する必要があります。

税務署長はこの申請理由が相当でないと認めるときは、申請を却下することができます。

なお、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に延長又は却下の処分が無いときは、申請した期日が確定申告書の提出期限となります。

③提出期限の延長の特例(中間申告書は対象外)(法人税法75条の2 1項、2項、3項、4項、5項、6項)
会計監査人(監査法人、公認会計士)の監査を受けなければならないことなどの理由で決算が確定しないため、その事業年度以後の各事業年度の確定申告書を提出期限までに提出できないことが続くと認められる場合は、所轄税務署長は、その内国法人の申請により、各事業年度(残余財産の確定日の属する事業年度を除く)の確定申告書の提出期限を1ヶ月間(特別の事情により各事業年度終了の日の翌日から3ヶ月以内に各事業年度の決算についての定時株主総会が招集されないことや、やむを得ない事情があると認められる場合は、税務署長が指定する月数の期間)延長することができます。

会計監査人(監査法人、公認会計士)の監査を受けなければならない会社

この提出期限の延長の特例申請は申請に係る事業年度終了の日までにする必要があり、申告書の提出期限までに決算が確定しない理由、税務署長の指定を受けようとする場合はその指定を受けようとする月数等を記載した申請書を提出する必要があります。

事業年度終了の日の翌日から15日以内にその申請の延長又は却下の処分が無いときは延長の申請が承認されたものとみなされます。

なお、「申告期限の延長の特例」申請は、一度申請すると翌年以降も自動的に継続して適用されます。

申告期限の延長の特例の申請書

また、税務署長は、確定申告書の提出期限の延長の特例を受けている内国法人に、提出期限の延長の特例理由や事情が無いと認める場合、事情に変更が生じたと認める場合は、書面により提出期限の延長の処分を取り消し、又は指定月数を変更することができます。この取消し又は変更の処分があつたときは、その処分のあつた日の属する事業年度以後の各事業年度に、その処分の効果が生じます。

さらに、申告書の提出期限の延長特例を受けている内国法人が特例を受けることを止めるときは、その事業年度の終了の日までに、「申告期限の延長の特例の取りやめの届出書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

この場合、当該届出書の提出事業年度以後については提出期限の延長の特例は効力を失います。

申告期限の延長の特例の取りやめの届出書

なお、この提出期限の延長の特例は会計監査人による監査を受けていない内国法人でも申請は行えます。

ポイントは定款に定時株主総会が事業年度の終了後「3ヶ月」以内に開催する旨の文言があるかどうかです。

法人税法上、法人税の申告期限は原則として事業年度終了後2ヶ月以内と定められています(法人税法74条1項)が、会社法上は基本的に定時株主総会を事業年度終了後3ヶ月以内に開催するものとされています。

つまり、事業年度の終了から3ヶ月目に定時株主総会を行う内国法人の場合は、事業年度終了後2ヶ月以内に法人税額が確定していない可能性があり、このような場合は申告期限の延長の特例の申請が可能となります。

よって定款に定時株主総会の開催が事業年度終了後2ヶ月以内の記載ある内国法人は、定款変更(株主総会での特別決議が必要(会社法309条2項))により定時株主総会の開催を事業年度終了後3ヶ月以内にすることにより、申告期限の延長の特例の申請が可能となります。

ただし、この場合でも納付期限の延長はできませんので、延長した場合は1ヶ月分の利子税を負担する必要があります。

(注)定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない(会社法296条1項)と規定していますので、事業年度終了後3ヶ月以内に必ず招集しなければならないわけではありません。災害等により定時株主総会を開催できる状況にない場合などは開催できる状況になった時に開催すれば問題ないと思われます。ただし、株主総会を開催する場合は、権利を行使できる株主を確定するために基準日を決める必要があり、この基準日時点の株主が行使できる権利内容は基準日から3ヶ月以内に行使するものに限られます(会社法124条1項、2項)。通常の場合、基準日は定款で定められており、事業年度末日としています。そのため定時株主総会は事業年度終了から3ヶ月以内に開催することにしています。