会計監査人(監査法人、公認会計士)の監査対象会社
会計監査人の監査を受けなければならない会社は
①大会社
②監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社
③会計監査人の任意設置を行った会社
になります。
①大会社(会社法328条)
大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表の資本金が5億円以上、または、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部の合計額が200億円以上である株式会社をいいます(会社法2条6項)。
最終事業年度に係る貸借対照表とは、
1.定時株主総会の承認を受けた貸借対照表
又は
2.定時株主総会に報告された貸借対照表
をいいます(会社法438条2項、439条)。
よって、期中に増資や減資で資本金に増減が生じても期中のその時点で大会社になったり、大会社でなくなったりすることはなく、また、負債の部の合計額も期末時点でのみ判断します。
なお、株式会社の成立後、最初の定時株主総会までの間においては会社成立日の貸借対照表をいいます(会社法2条6号)。
資本金の増減、負債の部の合計額の増減による会計監査要否のタイミング
例えば00年3月期末の資本金が10億円で翌期中に減資し、01年3月期末の資本金が3億円となった場合(いずれの期末においても負債の部の合計は200億円未満)は、00年3月期の定時株主総会時の資本金は10億円で大会社に該当するため01年3月期の会計監査人による監査が必要になり、01年3月期の定時株主総会時の資本金は3億円で大会社ではないため02年3月期の会計監査人による監査は不要になります。
逆に、05年3月期末の資本金が3億円で翌期中に増資し、06年3月期末の資本金が10億円となった場合(いずれの期末においても負債の部の合計は200億円未満)は、05年3月期の定時株主総会時の資本金は3億円で大会社には該当しないため06年3月期の会計監査人による監査は不要ですが、06年3月期の定時株主総会時の資本金が10億円で大会社に該当するため、07年3月期から会計監査人による監査が必要になります。
負債の部の合計額も同じように考え、10年3月期末の負債の部の合計額が250億円で翌期中に負債が減少し、01年3月期末の負債の部の合計額が190億円となった場合(いずれの期末においても資本金は5億円未満)は、00年3月期の定時株主総会時の負債の部の合計額は250億円で大会社に該当するため01年3月期の会計監査人による監査が必要になり、01年3月期の定時株主総会時の負債の部の合計額は190億円で大会社ではないため02年3月期の会計監査人による監査は不要になります。
逆に、15年3月期末の負債の部の合計額が190億円で翌期中に負債が増加し、16年3月期末の負債の部の合計額が250億円となった場合(いずれの期末においても資本金は5億円未満)は、15年3月期の定時株主総会時の負債の部の合計額は190億円で大会社に該当しないため会計監査人による監査は不要ですが、16年3月期の定時株主総会時の負債の部の合計額は250億円で大会社に該当するため17年3月期から会計監査人による監査が必要になります。
(注)定款で会計監査人を設置する旨を定めている会社は、資本金や負債の部の合計額にかかわらず下記③の会計監査人の任意設置を行った会社として会計監査人による監査が必要になります。
②監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社(会社法327条5項)
監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社においては、会計監査人の監査が義務付けられています。
③会計監査人の任意設置を行った会社(会社法326条2項)
会社法において株主総会と取締役は設置が義務付けられていますが、これら以外の機関については設置が任意となっています。すなわち定款で会計監査人を設置すること自体は自由ですが、会計監査人を一度設置すると定款変更により会計監査人設置をやめるまで、会計監査人による監査が必ず必要になります。