相続放棄はいつからいつまでできる?生前に相続放棄できる?相続放棄ができる期間

相続放棄ができる期間 いつからいつまで?生前に相続放棄は?

相続放棄は、民法によってできる期間(熟慮期間)が決まっています。

相続放棄ができる期間が決まっている理由は、相続関係の早期安定と相続人の利益保護とのバランスです。

しかし、相続財産が多かったり複雑で財産(特に負債)の調査に時間がかかり、期間内に終わらない場合があります。
また被相続人と疎遠であったり、先順位の相続人の相続放棄により相続人になった場合、そもそも相続人になっていることを認識できない場合があります。

こういった問題がある場合に熟慮期間を原則通りとすると様々な問題が発生しますので、熟慮期間経過後でも相続放棄が認められる場合があります。

ここでは、相続放棄がいつからいつまでできるのか?相続放棄の起算点や生前に相続放棄できるのかなど相続放棄ができる期間について紹介していきます。

■相続放棄はいつからできる?

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から開始します。

被相続人の死亡の時からではなく、相続開始の原因である被相続人の死亡の事実を知り、それによって自分が法律上の相続人になっていることを知ったときが、熟慮期間の開始時期となります。

そのため、被相続人の生前に相続放棄をすることはできず、また、配偶者や子ども(第一順位)と両親等の直系尊属(第二順位)、兄弟姉妹など(第三順位)では、熟慮期間の開始時期が異なる場合があります。

熟慮期間の起算点に関し、特殊な事情がある場合

■相続放棄はいつまでできる?

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。

3か月を超えると、単純承認したものとみなされ相続放棄をすることができません。

■3か月の熟慮期間後でも相続放棄できる場合

相続放棄は、相続開始があったことを知った時から3か月以内に手続きを行なわなければなりませんが、
(1)熟慮期間の起算点は相続開始があったことを知った時より後とするのが相当ということで最高裁が相続開始があったことを知った時より3か月を超えた後も相続放棄を認めた判例があります。
また
(2)再転相続があった場合、相続開始を知った時から3か月経った後も相続放棄が可能な場合があります。

(1)最高裁が3か月を超えた後も相続放棄を認めた判例
・被相続人からも被相続人の債権者からも借金が無いといわれていた
・被相続人と音信不通で、資産や負債について何も知らず、さらに遺産の状況を知るのが困難だった

など、

・被相続人に借金が無いと、相続人が信じ、借金があることを知らなかったことに相当の理由がある
・相続人と被相続人の交際が無かったなど、相続放棄できなかったことに相当の理由がある

といった要件を満たす場合は、相続開始を知った時から3か月経った後も相続放棄が認められることがあります。

ただし、裁判所に認めてもらうのは難しい事象ですので、慎重な判断、手続きが必要です。専門家に相談するようにしてください。

熟慮期間の起算点に関し、特殊な事情がある場合

(2)再転相続があった場合
再転相続とは、2つ以上の相続が続けて発生することで、具体的には、被相続人が死亡し、その相続人が相続手続きをしている間に、その相続人も死亡してしまった場合に起こる相続のことです。

再転相続は、後続の相続人(上記では2人目の相続人)に相続を承認するか放棄するかの選択権が引き継がれますが、2人目の相続人の相続放棄の期限は、2人目の相続人が1人目の相続人に対する相続が開始したことを知った日から3か月になります(民法916条)。

よって、再転相続があった場合は、2人目以降の相続人の相続放棄の期限は、最初の被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以上経過後になります。

相続手続き中に相続人が死亡した場合(再転相続)の起算点

■熟慮期間3か月は延長することができる

被相続人と相続人との関係が疎遠だったなど、相続人が被相続人の財産を確定させるのに時間がかかる場合がありますが、このような場合、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて、相続の承認又は放棄の熟慮期間を伸ばしてもらうことができます。

相続承認後に、被相続人に資産を超える多額の負債があることが判明した場合、相続人は多額の債務を負うことになり、相続人個人の財産の処分だけでなく、最悪自己破産にもなりかねないためです。

なお、熟慮期間の伸長の申し立ては、必ず認められるとは限りません。伸長の申し立てをする場合は、専門家に相談するなど慎重な対応が必要です。

申立てに必要な費用、書類
1.費用
収入印紙800円分(相続人1人につき)
連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。なお,各裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)

2.申立てに必要な書類
(1)申立書
申立書書式、記載例

(2)標準的な申立添付書類

※ 同じ書類は1通で足ります。
※ 戸籍等の謄本(戸籍等の全部事項証明書)。
※ 申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は、申立後に追加提出することでも差し支えありません。
※ 審理のために必要な場合は追加書類の提出が必要。

【共通】
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(親族の場合、戸籍謄本等)
・伸長を求める相続人の戸籍謄本

【被相続人の配偶者に関する申立ての場合】
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

【被相続人の子又はその代襲者(孫、ひ孫等)(第一順位相続人)に関する申立ての場合】
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

【被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)に関する申立ての場合】
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合、父母))がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

【被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)に関する申立ての場合】
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

引用:裁判所)